ビデオ会議ソフト「Zoom」の創設者も新華僑

新型コロナウイルス感染拡大の影響で,大学では教室での対面授業ができなくなり,オンライン授業,オンデマンド授業,Web会議やらで,私を含む教員の多くは四苦八苦の毎日である。
最近,多くの大学の先生のメール上での話に出てくるのが,「ビデオ会議のソフトは,Microsoftの『Teams』より『Zoom』の方が使いやすい」という話題だ。
この方面に詳しくない私にとっては,どちらでもよいことなのだが,毎日「Zoom」という名前が出てきて,それはアメリカにある会社のソフトということを知った。

世界の華僑・華人について研究している私は(『新・中華街』講談社選書),今日になって,ふと思った。
「Zoom」の会社がアメリカなら,シリコンバレーにあるのかも。
「シリコンバレーでITの技術開発を行っているエンジニアの中には,中国系(そしてインド系)が多い。シリコンバレーの中心地,サンノゼのショッピングセンターに行くと,アジア系が多い」と,いつも講義で話している。
だったら,ひょっとしたら,その「Zoom」という会社も,中国系の技術者や元留学生などと関係があるかもしれない。

というのも,「Yahoo!」の創設者(2人)の1人も,台湾の台北で生まれ,1978年,サンノゼに渡った楊致遠(ジェリー・ヤン)であった。
もしかしたら,と思い,「Zoom」の会社,Zoomビデオコミュニケーションズについて,日本語,中国語,英語のネット情報で探ってみた。
創設者エリック・ヤン(袁征,Eric S. Yuan)は,1970年,中国の山東省泰安市生まれで,山東鉱業学院(現・山東科技大学)で応用数学,中国鉱業大学で工学修士を取得した後,日本で4年間働いたそうだ。
在日の経験があるところが,さらに興味深い。
日本にいた1994年に,来日したビル・ゲイツの講演に触発され,1997年,27歳の時,シリコンバレーに渡った。
2006年,スタンフォード大学でMBAを取得した後,2015年,Zoomビデオコミュニケーションズの社長に就任したそうである。

これで,私の研究テーマと「Zoom」が結びついた。
先日の勤務先の大学のWeb会議は,Microsoftの「Teams」を用いて行われたが,なんだか「Zoom」の方に親近感がわいてきた。
「そんな話,だれでも知ってるよ」という有名な話かもしれないが,私にとっては新しい発見であった。