大学院修了生・在校生の皆さんへ贈る言葉

「桐峰」(筑波大学教育研究科社会科教育コース)2017年3月

 大学院修了生・在校生の皆さんへ贈る言葉

―筑波大学13年間(1997年4月~2017年3月)の思い出―

 山 下 清 海

 筑波大学大学院教育研究科社会科教育コースの修了生の皆さんと同じ時期に,私も筑波大学を定年で去ることになりました。4月からは立正大学地球環境科学部地理学科で引き続き,地理学の教育・研究を続ける予定です。

学部は東京教育大学理学部地学科地理学専攻,大学院は筑波大学の地球科学研究科地理学・水文学専攻で学んだ後,1年間,筑波大学の比較文化学類で準研究員として勤めました。その後,秋田大学教育学部で14年間,東洋大学国際地域学部で7年間,そして筑波大学で13年間,計35年間,大学の多くの学生,先生,事務の方々にお世話になりました。

この3月末で定年退職しますが,これまでの教育・研究生活を振り返と,「もっと早く気がついておけばよかったのに」,「あの時,どうしてやらなかったのだろう」などと,反省することばかりです。そこで,これから長い人生を過ごすことになる修了生や在校生の皆さんに,私なりの「贈る言葉」をまとめてみました。

1.締め切りは自分で決めて,厳格に守る

大学院生の生活でもそうですが,社会に出ると,次から次に仕事が降ってきます。そのような仕事は,たいてい締め切りがあります。大事なのは,「いつまでに,どの仕事を片付けるか」ということを,自分自身で決めることです。例えば,「この仕事は,今日中に片付ける。多くの時間をかけるほどの重要な仕事ではないから」とか,「このレポート(論文)は,今週の日曜日までに絶対に仕上げる」と決めれば,あと数日,必死に頑張らざる得なくなります。自分で締め切りを決めないと,ずるずる先延ばしにし,無駄な時間が過ぎていくだけです。

 2.長期的なスケジュールを立てる

数か月,半年,年単位など,長期的なスケジュールを,自分で立てることが大切です。私は,よく正月に,新しく迎えた年の論文や本を仕上げる計画を立てます。例えば,夏休みまでに『○○の本』を仕上げて,その後「□□の研究」の論文を12月半ばまでに学会誌に投稿する,などと。このような長期的な計画がないと,貴重な1年は,あっという間に過ぎてしまいます。

 3.仕事には優先順位をつける

たくさんの仕事が目の前に積み重なっている場合,多くの人間は重要性の低い仕事に「逃げ」がちです。最も重要で,今,最優先でやるべき仕事(例えば博士論文や修士論文の執筆,学会誌への論文の投稿など)を放っておいて,優先度の低い仕事を「一生懸命にやっている」という大学院生をよく見かけます。最優先すべき研究や仕事に「行き詰る」と,多くの人はより楽な仕事に逃げてしまうのです。大学受験の時,あまり読書家でもなかった私は,無性に文庫本の小説が読みたくなり,布団の中でたくさん読みました。しかし,受験が終わった途端,文庫本には全く手を出さなくなりました。

4.研究はロマンである

私は研究者なので,「研究はロマン」であり,「好きなことを研究できる仕事を選んで,ほんとうによかった」と思っています。年齢を重ねるにつれ,「地理学という学問が,ほんとうに好きなんだ」と痛感しています。私の場合は「研究」ですが,社会に出てさまざまな仕事に取り組んでいる人にとっては,「仕事はロマンである」と置き換えることができます。私の言いたいことは,「好きなことをやりなさい」ということです。とはいうものの,「時間もお金もない」という人がいます。時間もお金も,待っていればできるものではありません。時間もお金も,自分で努力して獲得するものです。その強い意欲はどこから生まれてくるのか。それが「ロマン」なのです。

   2017年3月   社会科教育コース 地理学分野 教員  山 下 清 海

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